国税徴収官とは?国税専門官の3つの分類を元調査官が解説

公務員

国税専門官の三つの職種のうち、国税徴収官を解説していきます。

筆者のバツマルは調査官として働いていましたので、徴収官ではありませんでした。
ですが税務署内の同じフロアに徴収部署があり、よく話をしたり仕事を見ていたりしましたので、大抵のことは把握しているつもりです。

もちろん実務経験があるわけではないのですが、それでもこれから徴収官を目指す人よりは実情を知っていると思うので、その助けになれるよう解説していきたいと思います。

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国税徴収官とは

国税徴収官は、本来納税するべき税金が納められず滞納しているときに、主に滞納者に対して法律に基づき納税を催促することを業務としています。

徴収官は徴収部門に所属する職員であり、上司は統括徴収官という肩書を持っています。
調査部門には調査官、統括調査官という人たちがいますが、同じような関係性だと考えてもらって大丈夫です。

地方税務署だと、調査部門は法人個人資産全てで7~14部門あるのですが、徴収部門は1~2部門です。
この少ない人数で、ハードな徴収という業務をこなしていかなければなりません。

また、調査部門は法人を担当する部署、個人を担当する部署、相続税等を担当する部署に分かれていますので、法人担当部署は基本的に法人が納める税を調査します。
具体的には法人税、消費税、源泉所得税です。
個人課税部門であれば法人税の代わりに所得税です。

言い換えれば担当する税目に長けていればそれでいいわけです。

ですが徴収部門はそういうわけにはいきません。
法人も個人も関係なく徴収業務をおこないますから、あらゆる税目の知識がないと対応できないのです。

加えて延滞税や加算税も必須の知識です。
延滞税は期間や例外など複雑怪奇なルールがあり、ベテラン調査官でも迷うことがあるのです。

国税専門官と言えば「国税調査官」がすぐに思い浮かぶ人は多いでしょう。
ドラマなどの影響で「国税査察官」も有名ですね。なんだか精鋭部隊みたいなイメージを持たれるかもしれません。

それに比べて国税徴収官はなかなか話題に上がらず知名度も低いのですが、実はとても多くの知識が必要な業務を行っているのです。

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国税徴収官の仕事内容

「徴収官」という名前からして、強制的に家宅捜査をして金目のものがあったら差し押さえの札をベタベタ貼っていく怖い人たち、という想像をする人がいるかもしれません。

確かに国税徴収官には、調査官や査察官にはない強い権限が与えられています。
それは、滞納処分の業務を執行するにあたり必要であれば、令状を必要とせず滞納者の自宅を捜索・差し押さえることができるのです。

あの国税査察官ですら、強制捜査を行う際には裁判所の令状が必要なのですから、どれぐらい強力な権限かお分かりいただけるかと思います。

もちろん徴収官が強制捜査を行う場合は、身分証である「徴収職員証票」を示す必要があります。
この証票を印籠のごとく提示さえすれば、滞納者の同意は必要ありません

が、税務署勤務の徴収職員がこういった強制捜査を行うのは日常的にあることではありません。

そういった派手な仕事よりも、税金が納められなくて困っている滞納者の相談に乗り、今後どのように支払っていくかという計画を考えるといった、どちらかというと納税困難な人のアドバイザー的な業務がメインです。

また強制捜査を行うにしても、自宅の捜索や財産の差し押さえといった非常に強力な権力の執行ですから、事前に入念な調査が行われます。

滞納者の経済状況、家族構成、職業、過去の滞納歴・・・様々な情報を収集しますし、自ら納税するよう働きかけることも当然行います。

それでも前向きな姿勢がなく、支払い能力がありながら滞納を続ける悪質な人に対してだけ強制捜査に踏み切るのです。

そしてそこに至るまでの地道な裏付け作業もまた、とても大切な業務なのです。

税務署時代、調査部門へ面談に来る人は、一様に怒りの表情をしていました。
税務調査の結果に納得がいかない、そもそもなんでうちに調査に来るんだ、といった文句を言いに来ている人がほとんどだからです。

それをなだめすかして説得したり、時には言い合いに近いような状態になることもあります。調査部門というのはいつも騒がしいんです。

ところが徴収部門に相談に来る人は、少し様子が違いました。

落胆し、心を閉ざし、泣いている人も少なくないのです。
徴収官に相談に来ている時点で、かれらは皆滞納者なのです。
そして自分でどうにかできたり、踏み倒してやろうという人はそもそも相談に来ません。

払いたいけど払えない。どうしたらいいのか自分ではもうわからなくなってしまって、徴収官に助けを求めに来ているわけです。

そうした人たちに対して国税徴収官は、彼らの滞納状況や資産状況を把握して滞納者一人一人に合ったプランを作成します。

納税の猶予申請をしたり、分割払いの計画表を作ることが主な対応策です。
それに基づいて納税している限り、延滞税は賦課しないなどといった救済措置を講じることもあります。

徴収官は納税の意思がある滞納者から、むりやり税金を奪いに行ったりはしません。
そうではなく、悪質な滞納者には毅然とした態度で納税を促すのが、正しい徴収官としての姿なのです。

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徴収官による差し押さえ

納めるべき税金が滞納された状態が続くと、徴収部門は滞納者に対して督促を行います。
文書や電話での督促連絡が一般的です。

それも無視していると何度か督促をして納税を促しますが、一定期間を過ぎると税務署もしびれを切らして「最終催告」が行われます。

これが最後だ。差し押さえするぞ」という内容の文書を送るのです。

それでもなお納税されない場合、滞納者の身辺調査を行います。
差し押さえの準備のためです。

家族構成、職場、収入や資産、過去の申告状況などありとあらゆることが調べ上げられます。
銀行の取引実績も把握できます。

そのうえで換金可能な現金や資産があると判断された場合、強制捜査のうえ差し押さえが実行されてしまいます。

事前通告もなし、裁判所の令状も必要なし、ある日いきなり税務署の徴収官が家に来て、職員証票を見せられ問答無用で金目の物を探されるのです。

とてつもなく恐ろしいですね・・・。

その後延滞税や加算税を含めて完納すれば、差し押さえられた物件は戻されますが、最悪の場合は競売にかけられて二度と取り戻せなくなることもありますので、もし納税を失念しても最初の督促があった時点で速やかに納付するか、税務署に相談に行くようにしましょう。

納税者も税務署も、お互いに大変な思いをするだけですからね。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。

国税徴収官というなかなかスポットの当たらない職種を取り上げて、いかにやりがいのある仕事かを説明したかったのですが、伝わりましたでしょうか。

なんだかヤクザみたいだな・・・と思われるかもしれませんが、差し押さえは徴収官の仕事のごくごく一部なのです。

強力な国家権力を持ちながらも、可能な限りそれを使わないように納税を促し、相談に乗ってなんとか解決策を見つけることこそ、徴収官の使命なのではないでしょうか。

受験生や採用予定者の皆さん、ぜひ徴収官という仕事について一度考えてみてください。
もしかしたら調査官よりも向いているかもしれませんよ!

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