はじめまして、元国税専門官のバツマルです。
この記事は「新人国税専門官のための税金教室」と題して、これから税務大学校で専門官基礎研修を受ける方、まさに受講中の方に向けた、税務署配属前に知っておくべき税金の基礎についてお話をしていく内容です。
もちろん税務大学校では優秀な先生方の授業があるのですが、実際に税務署に配属されたときに習得した知識をうまく使う方法については、なかなか教えてくれません。
半分ぐらいは自身の経験というか、実際に税務署で仕事を始めてみて確定申告作業をするにあたって、
「もっとちゃんと勉強しておけばよかった・・・」
と感じたことを思い出しながら書いてみましたので、よかったら最後まで読んでくださいね。
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所得税は管理運営部門で超重要!
所得税とはどんな税金なのか解説する前に言っておきたいことがあります。
それは、
税務署に配属された初日から、所得税は超超重要!!
ということです。
なぜか?
それは、税務署に配属された新人が一番こなさなければならない大仕事が、所得税の確定申告業務だからです。
確定申告というと、もしかしたらご存じの方もいるかもしれませんが、1~3月にかけて大勢の人が税務署に申告書を出しに来る、まさに税務署の一大イベントです。
ですが、実はこの時期以外にも確定申告を行うために税務署に来る人はいます。
中規模の税務署だと一日に10人ぐらいでしょうか。
内容として多いのは、会社でサラリーマン勤めをしているが、妻の給与が思ったより多くて扶養控除から外れてしまった、というようなものです。
他にも給与を2か所以上からもらっている、住宅ローン控除を受ける、などもよくあるパターンです。
いずれも税務署においてあるパソコンを操作して、今のままでは誤った税額になっているものを「正しい税額に確定させる」という処理をしないといけません。
これを手伝うのが新人国税専門官にとっては大事な仕事なのです。
必要な書類が何か理解し、申告内容を確認して端末を正しく操作。納税者から必要な情報を聞き出しながら、申告書を作成します。
最後に今回作成した申告書の内容について納税者にきちんと説明を行います。
ここまでが確定申告業務の一連の流れになります。
税務署に配属になると、場合によっては毎日のようにこの業務に従事することになります。
確定申告を行うのは基本的に所得税になりますから、所得税についてある程度知識がない状態で臨まないと、「パソコンの前に座ったはいいけど何をすればいいのかわからない」という状態になりかねません。
あるいはよくわからないまま申告書を作成して、後から内容が間違っていたとすると重大なクレームに繋がります。
もう一度言いますが、所得税は税務署に配属されたら即使う税目ですから、必ず事前にしっかりとした知識をつけておく必要があります。
所得税は個人所得に対する税金
さて、それでは所得税の中身について解説していきます。
所得税がかかる所得は、その性質によって以下の10種類に分かれています。
①利子所得
②配当所得
③不動産所得
④事業所得
⑤給与所得
⑥退職所得
⑦山林所得
⑧譲渡所得
⑨一時所得
⑩雑所得
管理運営部門で確定申告業務を行う時に重要になってくる順にすると、
①給与所得
②雑所得
➂事業所得
④退職所得
⑤配当所得
⑥利子所得
⑦譲渡所得
⑧不動産所得
⑨一時所得
⑩山林所得
となります。
実務上頻繁に出てくるのは④までです。
⑤から⑨はたまに目にする程度、⑩はあくまで経験談ですが、ほとんどお目にかかったことがないです。
まずは①から④の所得についてしっかり勉強しておく、と覚えて下さい。
給与をもらったとき、退職金をもらったとき、株式の配当を得たとき・・・いずれも個人の所得に対して課税されるもの、だから所得税と呼ばれています。
所得税の計算方法を簡単に説明します。
まずは収入金額を出します。給与所得者であれば源泉徴収票の「支払金額」になります。
次に収入から「所得」を出します。
収入から所得への出し方は所得の種類によって異なりますが、最もポピュラーな給与所得だと次の通りになります。
たとえば給与収入が1,500,000円の場合は所得控除が550,000円なので、所得金額は950,000円になります。
なお、所得控除の額について詳しく知りたければ国税庁のHPなどで確認することが出来ます。
所得を出したら次に所得控除を差し引きます。
所得控除は、保険料や医療費控除などを支払った場合、支払った額の一部について所得から除くことが出来ることを指します。
また所得控除には扶養控除や障害者控除などもあり、扶養している人数が多い人やハンデのある人が優遇される内容になっています。
そして忘れてはならないのが基礎控除。高額所得者以外は必ず控除でき、ほとんどの人は48万円の控除になります。
以上のような所得控除を所得から引くことで、「課税される所得」が算出できます。
ここまで来たらあともう一歩です。
課税される所得に、税率を掛けます。
税率は課税される所得の金額によって変わりますが、最低でも5%です。
そして算出した金額が納める税額・・・ではありません。
ここから更に税額控除を行います。
先ほどの所得控除とは違い、一旦税額を算出して、そこから控除を行います。
住宅ローン控除が最もよく実務で出てきますから、計算方法はマスターしておきましょう。
ここまでで「課税される所得×税率-税額控除」という計算をしました。
出た額が所得税額となります。もし既に年末調整をして源泉徴収済みであれば、源泉徴収額を引くことで「追加で納めるべき税額」または「還付される税額」が算出されます。
以上が所得税の確定申告を行う際に必要な計算になります。
確定申告作成ソフトの手順に従えば80%大丈夫!
さて、先ほどは確定申告の際に使う計算について解説しました。
なんのこっちゃさっぱりわからん、と思った方。
ご安心ください。何も一語一句計算方法を暗記する必要はありません。
税務署に配属されて、来署した納税者に確定申告を依頼されたら税務署においてあるパソコン端末を操作して確定申告書を作るのですが、基本的には税額や控除額は確定申告作成に使用するソフトが自動計算してくれます。
皆さんがやるべきことは、次のことだけです。
①納税者が求めている申告内容を把握する
②必要な書類が揃っているか確認する
➂専用ソフトに必要な情報を間違いなく入力する
④書類だけではわからない情報を納税者から聞き取る
⑤作成した申告書に間違いがないか確認する
⑥申告書の控えを渡す
面倒な計算や税率を完璧に暗記したところで、自動計算されるのであまり役には立たないのです。
それよりは、必要な書類は何なのかを覚えたり、入力間違いがないか入念にチェックする方がよっぽど大事です。
とはいえ、税務署の職員としては大まかな税率や控除の金額を知っておくべきだと個人的には思います。
いきなり納税者に質問されて慌てることがないように、基本的なことだけは押さえておきましょう。
まとめ
所得税はあらゆる税目の中で最重要といっても過言ではないほどですから、税額の出し方を覚えておいて損はないです。
管理運営部門を卒業した後、たとえどの部署に配属になっても所得税は仕事に関わってきます。そんな税目は他にありません。
税務大学校で習った税法などももちろん重要ですが、確定申告に慣れるにはパソコンを使って申告作業をしてみるのが一番です。
仮の数字を入れた源泉徴収票や控除資料を作って、どんどん確定申告の練習をしてください。
税務署でいきなり確定申告業務を完璧にこなせれば、先輩方も「おっ」と驚くことでしょう。
今回は以上です!
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